映画『殿、利息でござる!』を観て、江戸時代の人々の志を思う。

劇場で映画『殿、利息でござる!』の予告篇を観ていたら、「実は実話です」というキャッチコピーが流れ、原作者・磯田道史の名が登場。磯田道史といえば、映画『武士の家計簿』の原作ノンフィクション『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』の著者。
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*画像は(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

これは読まない訳には行かないだろう!…ということで、早速、図書館で原作『無私の日本人』を借りて読みました。今回は映画の話もさることながら、原作に関連する話に力点があります。映画『殿、利息でござる!』の原作になっているのは、『無私の日本人』の中の「穀田屋十三郎」です。

で、時代は江戸時代中期(1760-70年代)、舞台は陸奥国仙台藩領吉岡宿(現・宮城県黒川郡大和町吉岡)。吉岡宿は奥州街道の(上町・中町・下町に分かれる)宿場町で、出羽街道との分岐点でもある交通の要衝でありながら、住民が宿を宿を離れて、疲弊する一方という有様に。

その理由は、吉岡宿が仙台藩の直轄地では無く仙台藩宿老・但木氏領であるため、藩からの伝馬御合力(てんまおんごうりき:公用の荷物等を運ぶための人馬への助成金)が給付されず、人馬提供の課役が住民にとっては非常に重い負担であったためです。

こうした状況を見て宿の行く末を案じていた造り酒屋・穀田屋十三郎(高平重三郎:阿部サダオ)は、ある日、町一番の知恵者と自負する(笑)茶師・菅原屋篤平治(瑛太)から、藩に1000両という大金を貸し付けて、毎年、利息を受け取って宿場復興を目指すという奇策を打ち明けられます。
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*画像は(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

2人は、この奇策を秘かに他の有力者に持ち掛けてるとともに、計7人が爪に火を灯すような日々を足掛け8年間も続け、黒川郡の大肝煎(おおきもいり:有力村役人)も協力した結果、ついに藩に金を貸して、1773(安永2)年頃から毎年100両の利子を受け取ることに成功し、宿の全員に分配する…これが基本的なSTORYです。

下手をすれば打ち首もありうる、この大胆不敵なプロジェクト(笑)が8年間も掛かったのは、その金額=1000両(何で比較するかで変化しますが、現在の約3億円)という巨額であったことが最大の理由ですが、煩瑣な手続きや仙台藩出入司・萱場杢(かやば もく:松田龍平)等の役人側との駆け引き等の大きな障害があったからです。

この作品、最初の画像で分かるように、竹内結子・寺脇康文・西村雅彦・きたろう・堀部圭亮・草笛光子・千葉雄大等、出演者が実に多彩なのですが、それぞれが実に好演。妻夫木聡・山崎努はチョッとオイシイ役どころ。仙台藩第7代藩主・伊達重村役で羽生結弦が登場するのはご愛敬ですね(最初のポスター左上)。

この実話が、これまで知られていなかったのは、関係者が掟を作り、厳しく箝口令(かんこうれい)を敷いてきたからです。が、現地の僧侶が『国恩記』という記録を残しており、それに関係する資料を収集していた吉田勝吉という方が磯田道史氏に手紙を送り、それに応えた磯田氏が改めて調べて「穀田屋十三郎」を発表します。
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*画像は「文藝春秋BOOKS」のHPから転載させていただいています。Copyright © Bungeishunju Ltd.

この経緯自体が1つのドラマなのですが、この映画に描かれた人々の志には、行者橋にはとても真似のできない気高さがあります。江戸時代の豪農・豪商の中には広い教養や見識を持ち、公(おおやけ)のために尽力した人々が数多くいます。ちなみに、穀田屋十三郎の子孫の方々は現在もご健在で酒屋を営んでいらっしゃいます。

行者橋は映画を観ながら、高田郁の著書『あい 永遠にあり』に登場する関寛斎とその支援者・濱口梧陵(はまぐち ごりょう)を思い出しました。いや、思い出しても悲しくなる現在の県会議員や国会議員等をはじめとする“公務員”の行状を彼らが見たら、どれほど嘆くことだろうと思わざるを得ませんでした。

今回は、思わず力が入り、文章が長くなり過ぎました(笑)。映画『殿、利息でござる!』は笑えて、色々と感じさせられる作品でお薦めです。今週末、14日から全国公開です。

◆『殿、利息でござる!』(2016年・日本映画・129分・監督:中村義好・配給: 松竹・2016.05.14公開・宮城県は2016.05.07先行公開)
〔最近観た映画から-№43〕

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この記事へのコメント

二胡浮
2017年08月27日 07:46
「殿、利息で御座る」の資料を読ませて頂きました。良く纏めておられます。一点コメントが御座います。菅原屋篤平治(笠原篤平治)と多くの方が記載していますが、(笠原篤平治)は誤りです。これは大元の引用文献「宮城県黒川郡誌」がそもそも「菅原屋篤平治」とすべき所を誤って「笠原篤平治」としたためです。これについては正誤表「黒川郡誌正誤調」の395ページで「笠原篤平治」⇒「菅原屋篤平治」と訂正しております。お手数ですが、訂正して頂ければ幸いです。
行者橋 渡
2017年08月30日 14:02
二胡浮様、懇切丁寧なご教示、有難うございます。本文から(笠原篤平治)の文字は削除いたしました。一応、色々と調べて書いたのですがおおもとの文献に誤りがあると、それを不注意に引用すると、誤りが拡散し、当方のように2次資料から引用するとさらに悲惨なことになってしまいますね。今後、気をつけて記述していきたいと思います。本当に有難うございました。