黒田辰秋の漆と螺鈿の作品を楽しむ:その②。

祇園祭関係の記事が入ったので随分間があきましたが、美術館「ZENBI-鍵善良房-」(以下、「ZENBI」)の開館記念特別展『黒田辰秋と鍵善良房-結ばれた美への約束』(既に終了)の第2弾は展示室2(テーマは茶器を彩る器」)の作品群のご紹介ですが、最初の作品は「乾漆八稜水指裡耀貝螺鈿:かんしつ はちりょう みずさし うらようがいらでん」(1960=昭和35年頃)。
2021.06.25黒田辰秋と鍵善良房  (100)乾漆八稜水指裡耀貝螺鈿.JPG


展示室2に入ると、こんな光景が。左に見えるのが黒田辰秋の作品集『黒田辰秋 人と作品』(1976=昭和51年 駸々堂出版刊)です。
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白州正子との対談やエッセイ、志賀直哉・武者小路実篤・小林秀雄・川端康成・浜田庄司他が寄稿し、土門拳が 写真監修(土門の弟・牧直視が撮影)、芹沢銈介が装丁と題字の意匠、柳悦孝(柳宗悦の甥)が表紙裂を担当するという豪華本です。
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続いては、「拭漆縞柿炉縁:ふきうるし しまがき ろぶち」(1965-74=昭和40年代)。茶室用の炉縁ということですが、渋いですねぇ。
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柿の木は緻密で堅いので家具等に使われますが、黒色の縞や柄が生じたものは銘木として珍重されたそうです。ちなみに、行者橋の子供の頃は「柿の枝は大きくても折れやすいので、絶対に乗ってはいけない」と言われましたが、実際、予想外に折れることが多かったです(笑)。
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上の画像は「共筒茶杓:ともづつちゃしゃく」、次は「茶杓」です。いずれも1965-74=昭和40年代の制作。黒田辰秋は茶杓も多数制作したそうで、筒の上部にある黒い部分は「辰」の焼印だと思います。
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次は「白楽茶碗」(1965-74=昭和40年代)。
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続いては「赤託茶碗」(1965-74=昭和40年代)。両方共、端正なフォルムだと思います。
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元々、漆匠(塗師屋:ぬしや)の家に生まれた黒田辰秋は 木地作り・漆の下地・螺鈿や蒔絵等の分業工程に疑問を持って、全作業の一貫制作を実践したのですが、茶道関連にもそうした姿勢で臨んだことが分かります。
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上の画像は展示室2の奥の様子ですが、左端に「赤楽茶碗」が、その右隣に最初の画像の「乾漆八稜水指裡耀貝螺鈿」が見えます。次はその水指の内側。
2021.06.25黒田辰秋と鍵善良房  (101)乾漆八稜水指裡耀貝螺鈿.JPG
乾漆なんて仏像専用用語だと思ってました(笑)。実際に水を入れると一層輝きそうな螺鈿が素晴らしい!…のですが、口の砂子状の小さな螺鈿も魅力的です。次は「蔦金輪寺茶器:つた きんりんじ ちゃき」(1961=昭和36年頃)。
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これは茶会で客に出す抹茶の分量だけを入れる器で、蔦材で高さ8cm・直径7cm。経筒に由来するとも。金輪寺の名の由来は割愛。
こちらは「青貝入尾張茶器」(1965-74=昭和40年代)。
2021.06.25黒田辰秋と鍵善良房  (109)青貝入尾張茶器.JPG
尾張茶器の詳細は不明です。12の区画に分かれたデザインですが、底の微妙なまるみが素敵です。そして、続いては「耀貝螺鈿茶器」(1965-74=昭和40年代)。
2021.06.25黒田辰秋と鍵善良房  (110)輝貝螺鈿茶器.JPG
黒田辰秋はメキシコ産のアワビ(鮑)を10年程保存して使用したそうですが、6区画に分かれたデザインで、前の「青貝入尾張茶器」と違った美しさに溢れています。次からは漆器。
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上の画像は「朱漆捻茶器:しゅうるし ひねり ちゃき」(1965-74=昭和40年代)。捻りの曲線が美しい。続いては「朱溜花文茶器:しゅだめ かもん ちゃき」(1965-74=昭和40年代)。
2021.06.25黒田辰秋と鍵善良房  (115)朱溜花文茶器.JPG
朱溜は、最初の下塗りの上に朱色の中塗りをし、更に水分を抜いて透明度を高めた透漆(すきうるし)をかけたものです。花の文様となっていますが、花火のようです(笑)。次は「拭漆百日紅中次:ふきうるし さるすべり なかつぎ」(制昨年不明)。
2021.06.25黒田辰秋と鍵善良房  (119)拭漆百日紅中次.JPG
中次は棗(なつめ)と同じく抹茶入れる容器ですが、円筒の寸切形で、蓋と身の合わせ目(合口)が胴のほぼ中央にあることに由来するとか。拭漆は材質の木目が良く分かりますね。漆器の最後は「根来塗平棗:ねごろぬり ひらなつめ」(制昨年不明)。
2021.06.25黒田辰秋と鍵善良房  (122)根来塗平棗.JPG
平棗は、文字通り、全体が平べったい棗ですね。根来塗は黒漆の下塗りに朱漆を塗るもので、使っていると黒い部分が良い景色を作ったりしますね。上の画像の平棗はお饅頭のよう(笑)。その②の最後は書。
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「運鈍根」ですが、運は「自分にはこの道しかないと思い込んで、ただひたすら」やる、鈍は「コツコツコツコツ弛(たゆ)まずやる」、根は「粘り強く、一つ事を繰り返し繰り返しやる」、「鈍も根もコツコツですね」という言葉通りの黒田辰秋の姿勢ですね。

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